やる気はどこからくるのか?

なにかことを始めるときには、やる気が必要ですね。
やる気が出ないのはうつ病の代表的な症状ですが
今日はそのやる気はどこからくるのかを考えてみたいと思います。

やる気は、脳の神経伝達物質、ノルアドレナリンやアドレナリン
によって左右されていると言われています。
つまりノルアドレナリンやアドレナリンの分泌が少ないと
やる気は低下するとされています。

さて、ノルアドレナリン、アドレナリンは体内においても
ホルモンとして作用しています。
その主な役割は心拍数、血圧、血糖値を上昇させ体をいつでも活動
できる状態にすることです。
逆に活動に備えてエネルギーをセーブするために胃腸の働きを弱めます。

ノルアドレナリン、アドレナリンには日内変動があり通常は
交感神経が優位になる朝から夕方にかけて多く分泌されて
副交感神経が優位になる夕方から朝にかけては分泌が少なくなります。

ノルアドレナリン、アドレナリンには血糖値を上昇させる作用があるため
食事を抜くとか、低血糖症が原因で血糖値が低くなると通常より多く分泌されて
血糖値の上昇に貢献します。

脳におけるノルアドレナリン、アドレナリンの働きは
「気持ちを走らせる」ことにあります。
ゆえに、やる気、勇気、闘争心、暴力に関係しています。
一方で、不安や恐怖にも関係しています。
これらの共通点は、「気持ちを走らせる」ところにあります。
通常の感情をもっと強いものへと変化させる力があるということです。


人間は長いこと狩りをして暮らしてきました。狩りに出かけるためには
やる気、勇気、闘争心、暴力の感情が必要だったものと思われます。
食物を得るための行動を起こすために、低血糖時に分泌されるようになったようです。
一方で狩りには、戦いが付きものです。
もし自分よりも強い相手に遭遇した場合は、逃避の行動を取らなければなりません。
そのために、不安や恐怖というネガティブな感情も必要であったものと思われます。

やる気の感情となるのか、または不安、恐怖の感情となるのかは
その人が置かれている状況によって変化するわけです。
実際、やる気と不安、恐怖の感情は紙一重です。
ノルアドレナリン、アドレナリンがやる気に使われていて
一生懸命集中した作業を実施している場合は、不安、恐怖を感じることは少ないです。
逆に、何もすることがなくリラックスしているときほど、不安、恐怖を感じ易いです。

低血糖発作においても同じ状況です。
緊張してる状態ではノルアドレナリン、アドレナリンが
多く分泌されるので起きることは少なくなります。
逆にだらだらした生活では、ノルアドレナリン、アドレナリンが
分泌されず低血糖発作が出やすくなります。

パキシルに代表される抗うつ剤は、セロトニンを増やすことによって
ノルアドレナリン、アドレナリンを抑制する働きがあります。
確かに、不安、恐怖はなくなるかもしれませんが
同時にやる気もなくなる可能性があります。

やる気を出すためには、やるべき対象があることが一番大切です。
やるべき対象がなければ、不安、恐怖に変化しやすくなってしまいます。

ノルアドレナリン、アドレナリンは活動をし始めることによって
分泌が多くなることが分かっています。
体がだるくて仕事に行きたくないなと思っても
行けばなんとか仕事ができるようになるのは
ノルアドレナリン、アドレナリンが不快感を取り去り
働ける状態をセットアップしてくれたおかげです。

体がだるくて活動したくない時に活動しなくても何とか生活できる状況が
副交感神経過剰の状態を作り、ますます体はだるくなり、うつ病を悪化させます。


精神科、心療内科の指導では、「だるい時は活動しない」が基本のようです。
急性期においてはそのような対応は必要だと思います。
しかしずっと続けているとうつ病を慢性化させる原因になります。
どれぐらいの治療段階から活動を始めるようにすれば良いのか?
これを的確に指導してくれる精神科、心療内科の医師は少ないようです。
2週間に1回10分ぐらいの診察では指導が難しいこともあると思います。
とくにかく何があっても休めだけしか言わない医師もいます。
自分の状態は自分が一番良く分かっているはずです。
残念ながらその時期は自分で判断するしかないようです。
体を動かそうと思っても、動かないときは、栄養に気を付けてみると良いと思います。
栄養状態が改善されれば動けるようになることが多いと思います。