自律神経と血糖調節異常(低血糖症)

人間の体は60兆個の細胞からなりますが、活動するためには、エネルギーが必要です
エネルギー源は食事から得られる3大栄養素、「糖質」、「たんぱく質」、「脂質」から
なります。


糖質

    ご飯、パン、パスタ、うどん、ソバ等に多く含まれます。
    体の中で最終的にぶどう糖まで消化分解されて体に吸収されます。


たんぱく質

    肉、魚、卵、乳製品等に多く含まれます。
    体の中では最終的にアミノ酸まで消化分解されて体に吸収されます。


脂質

    肉、魚に含まれる油、植物油、バター等に多く含まれます。
    体の中では、脂肪酸に消化分解されて体に吸収されます。


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細胞は「糖質」、「たんぱく質」、「脂質」が消化分解された
「ぶどう糖」、「アミノ酸」、「脂肪酸」を体のエネルギー源として使用することができます。
なかでも短期的に使用しやすいのは「ぶどう糖」、長期的には「脂肪酸」です。
「アミノ酸」はエネルギーとしても利用できますが効率の悪いエネルギー源となります。
ここで重要なことは、脳は通常「ぶどう糖」だけをエネルギー源としていることです。
しかも筋肉などと異なり、「ぶどう糖」を蓄えることもできません。
したがって、常に血液中から「ぶどう糖」の供給を受ける必要があります。
血液中のぶどう糖のことを血糖と言いますが
血糖は脳で常に必要とされる関係上、低くなっても、80mg/dlぐらいで
それ以下にはならないように、自律神経によってコントロールされています。

血糖が低下してくると、自律神経によりアドレナリン、グルカゴン、コルチゾールなどの
ホルモンが働き血糖を上昇させることになります。
この血糖を維持する機能が正常に働けば、血糖値は下がりすぎることはありませんが
正常に働けなくなると低血糖による症状が出る場合があり、低血糖症と呼ばれています。

低血糖の状態は、脳は機能低下してしまいさまざまな症状を出します。



低血糖の症状

  幻覚、幻聴、体がだるい、無気力、不安感、眠い、パニック発作、不眠
  アレルギー疾患の悪化、異常行動、キレ易い、不登校などなど、原因の分からない
  体調不良などです。
  うつ病、統合失調症、慢性疲労症候群と診断される場合もあります。

  軽い状態では気付かないこともありますが、私の経験では以下の症状がある方は
  注意した方が良いです。
  感情の起伏が激しい(急にイライラ、悲しくなったり、泣いたり)
  食事から2、3時間で体調が悪化する。
  15時〜18時の間に不快な症状がある。
  食事をしたばかりなのに空腹感がある。
  夜寝る前に食べないと眠れない。
  早朝覚醒がある。
  太っている。太りやすい体質。筋肉が少なくて脂肪が多い
  (見た目では太っていると分かりません)
  過食(摂食障害)
  中性脂肪が高い(140ぐらい)もしくは異常に低い(50ぐらい)
  総コレステロールが低い(160ぐらい)もしくは異常に高い(250以上)
  血中カリウムの低下(3.8以下)
  空腹時血糖が低い(70以下)もしくは高い(100以上)
  糖尿病の家系


低血糖症の原因

血糖は食事で、糖質を摂取すると消化吸収が始まるので上昇します。
通常30分後から60分後で140mg/dlぐらいまで上昇してその後緩やかに低下して
3〜4時間後には、空腹時と同じぐらいに戻ります。

  [血糖が下がる仕組み]
    食事で摂取された糖質の消化吸収が始まると血糖値は上昇します。
    体はその上昇を感知して、すい臓からインスリンというホルモンを出します。
    細胞はエネルギー源としてぶどう糖を取り込むのですが
    実は体のほとんどの細胞はインスリンがないと取り込むことができません。
    (脳、肝臓、腎臓などはインスリンなしでもぶどう糖を取り込むことができます。)
    つまり、インスリンが分泌されることによって、ぶどう糖が細胞に取り込まれて
    血糖値が下がるということになります。

ぶどう糖まで消化分解されるスピードの遅い糖質の場合は、血糖値は穏やかに上昇するまたインスリンも緩やかに分泌されます。
ところが、ぶどう糖まで消化分解されるスピードが異常に早い食品があります。
それは砂糖です。砂糖の消化分解は非常に簡単であるため即座に血糖値が上昇します。

砂糖は自然界にはもともと存在しなかった食品です。
人間は砂糖のように血糖値を急上昇させる食品を経験して来なかったため
それに対処するためには、体に相当な負担を掛けることになります。
急上昇する血糖値を下げようとして、インスリンを慌てて分泌します。
それでも血糖値を下げられないので、通常の量に追加してインスリンを分泌します。
そのような生活が続いていると、砂糖のように急激に血糖値を上昇させるような糖質でなくても必要以上のインスリンを出してしまうようになってしまいます。
インスリンが必要以上に出過ぎると、必要以上にぶどう糖が細胞に取り込まれてしまいます。細胞に必要以上にぶどう糖が取り込まれると、血糖は下がり過ぎてしまい低血糖を起こしてしまいます。

必要以上に細胞に取り込まれたぶどう糖はエネルギーに変換処理できる許容量を超えているためエネルギーに変換できなかった分は中性脂肪に変えられて体に蓄えられます。
その結果として中性脂肪の上昇や体脂肪の多い体になってしまうことがあります。



低血糖症にならないために

砂糖、および砂糖を含む食品を控えることです。
すでに低血糖症になっている場合は、改善されるまで糖質を控えた食事も必要だと思います。詳しくは、無料で配布しております小冊子「栄養とこころ」をご覧下さい。


血糖値を安定させるためにはビタミン、ミネラルが必要
血糖値を安定させるためには、多くのビタミン、ミネラルが必要です。
既に低血糖症になっている場合は、血糖値を安定させるためにそうでない人よりも
多くのビタミン、ミネラルを必要としている場合もあります。
血糖値を安定させるためには、カルシウム、マグネシウム、カリウム、亜鉛、クロム、マンガン、ビタミンB群、ビタミンCが特に大切です。


血糖値を安定させるためには自律神経を整えることが一番大切

人間の体には、低血糖にならないようにするため
血糖上昇
ホルモンを分泌して血糖値を維持する仕組みが備わっています。
だから、ある程度、食事をしていなくても、自律神経が正しく機能していれば
低血糖になることはありません。
しかし、精神疾患の方では、そのほとんどが低血糖症になっています。
なぜ低血糖になってしまうのでしょうか?
その根本的な原因としては2つあります。

○インスリンの分泌が多すぎる。
インスリンが多すぎると、必要以上にぶどう糖が細胞に取り込まれて
低血糖を起こすことがあります。
インスリンの分泌は副交感神経支配になります。

○血糖上昇ホルモンの分泌が低下している。
血糖を上昇させる主なホルモンは、アドレナリンとコルチゾールです。
血糖が下がり始めると分泌されますが
分泌が少なければ、血糖値を維持できず低血糖になります。
血糖を上昇させるホルモンは、交感神経支配になります。

人間が活動しているときは、交感神経優位の状態にあります。
ストレスを受けるなどの交感神経過剰な生活をしていると
活動に備えて血糖上昇ホルモンが働き、血糖値を上昇させます。

過剰に交感神経が働いている場合は、副交感神経の働きが極端に抑えられます。
インスリンの分泌は副交感神経によって支配されているので、分泌が低下して
血糖値を下げることができなくなります。すなわち糖尿病になり易いのです。
実際に、交感神経過剰な生活をしている働きすぎの人
ストレスの多い人は糖尿病になり易い傾向にあります。

一方、休みすぎの生活をしている人は、副交感神経過剰となっています。
副交感神経過剰の生活をしていると交感神経の働きが抑えられます。
したがって、食事と食事の間で低血糖になるような状況があったとしても
血糖上昇ホルモンを分泌することができません。
したがって低血糖になってしまうことがあります。
さらに、副交感神経が優位に働いているので
インスリンの分泌が増える傾向にあります。
必要以上にインスリンが分泌されると
ぶどう糖が細胞に取り込まれすぎて低血糖になってしまうことがあります。
糖尿病の家系では、インスリン抵抗性が原因して
さらなるインスリン多量分泌が起こりやすくなるため、低血糖症になり易いです。

低血糖症の症状はさまざまです。
幻聴、幻覚、強烈な不安、恐怖、強迫、パニック発作などがありますが
交感神経が優位に働いているような緊張した場面では起こりずらいです。
それよりも、副交感神経が優位になっている
ほっとしている瞬間や考え事をしている瞬間、休憩している時に起こり易いです。

血糖値を激しく上昇させる砂糖のような食品を摂ると、血糖値を下げようとして
インスリンを慌てて出さなければならなくなります。
副交感神経優位の生活をしてると、インスリンの分泌量は多くなります。
インスリンが多く分泌された結果、低血糖になって症状を誘発してしまいます。

低血糖症の原因は砂糖のような単純糖質の摂りすぎだと言われていますが
悪化させる一要因でしかありません。
血糖値は自律神経によって厳格に管理されています。
したがって、原因は自律神経 の乱れにあると言えます。

副交感神経過剰になる休みすぎの生活は低血糖症体質を作っているようなものです。
確かに、砂糖のように血糖値を急激に変動させる食品はよくありません。
しかし、普通に食品として存在している複合炭水化物の摂取まで制限することは
あまり良いことではないと感じています。
自律神経の働きを知らないドクターには白米等の複合炭水化物を
必要以上に制限している方もいるようです。
ドクターは自律神経のことをよく知らないことが多いです。

なぜ知らないのか?理由は簡単です。
自律神経を改善させるお薬や外科的手段がないからです。

自律神経の状態を検査する方法もありませんでした。
だからドクターは自律神経を意識した治療ができないのです。

大半のお薬は、自律神経を乱すものでしかありません。
自律神経を無視した上に構築されているのが今の医療の現実です。

低血糖症を改善したければ、自律神経を整えることが一番大切です。