栄養療法の問題点

精神科・心療内科では、症状を薬で抑える対症療法のみが
行われている場合が多いです。それでは、根本的なところを
治せるわけではありません。
薬は症状を軽減はしてくれる可能性はあるけども
十分に回復させるほどの効果を期待することは難しいと思います。
精神科・心療内科の薬は、脳に作用するため
使い方を間違えると安全性に疑問が残る非常に厄介な存在です。
最近ではSSRI系のパキシル等が良く処方されているようです。
抗うつ薬ですが、安全性は非常に高いのでしょうが
多少なりとも副作用があることが残念なところです。
そこで、カナダを中心に始まったのが栄養療法です。

脳で作られる感情は、脳の神経伝達物質のバランス
によって決まると考えられています。
神経伝達物質の原料は栄養素、食べた食物を元に体内で産生しています。
この産生は化学反応そのもので
体内ではさまざまな化学反応が起こっているわけすが
その化学反応には、酵素とビタミン、ミネラルが必要になります。
そこで、酵素の元である、たんぱく質や酵素の働きを助ける
補酵素としてビタミン、ミネラルを充分に補給してあげれば
病気が改善されるという仕組みです。

さて脳の神経伝達物質のバランスが正常に保たれれば
病気は治るでしょうか?病状が良くなる方は多いと思います。

しかし、栄養状態が回復して血液検査の状態が正常になっても
病気が完全に治らない人は多いです。
私の実感では、普通の精神科・心療内科の治療と栄養療法では
治癒率に大差はないと感じています。
もちろん、普通の精神科・心療内科の治療で治らない人が
栄養療法を実践することが多いこと、人体に与える副作用が比較的
少ないとこを考えると、栄養療法に分があるように思います。

栄養療法では足りない栄養素があるからそれを大量に補給するという考え方に
なっています。しかし医療がまじめに栄養で患者を治療をしようと思うならば
なぜ栄養不足になったのかを考えないといけないと思います。

栄養素が不足する原因は食事が悪いことと消費が激しいこと
遺伝的素質に合っていない生活をしていること等が考えられます。
つまり、自律神経を乱すような食生活や生活習慣が要因となっていることが多いのです。
やはりここでも生活習慣の改善は必須のようです。

精神科栄養療法の問題点は以下にあります。


○栄養素のバランスを整えるために、サプリメントを多量に使用すること
サプリメントは非常に高価です。残念ながら普通の人では手がでません。
治療を実施ているクリニックも少ないです。
普通の人でも気軽に試せるようになると、良い療法になる可能性はありますが
サプリメントが高価である限り普及はしないので残念でなりません。

○マニュアル通りの診療しかできない
栄養療法を実践している医師はマニュアル通りの診療しかできないことが多いです。
血液検査の結果がすべてで、足りない栄養素を
サプリメントで栄養を摂ることを強力に勧めてきます。
血液検査から栄養状態を読み取ることは医師の技術のようですが
単なる教えてもらったやり方です。マニュアルを元に読み取っているすぎません。
教えて貰えば誰にでもできると思います。
実際にその栄養素が不足しているかどうかは分りません。
血液検査は人間のほんの一部を検査しているに過ぎません。
検査項目よりももっと大切なことは
自分の生活に合っている食事ができているかどうかということです。
人によって必要な栄養バランスは違っています。遺伝子が違うから当然です。
サプリメントを大量に処方して栄養素を補うことよりも
なぜ栄養障害になったかを食生活、生活習慣を聞いて分析して欲しいものです。

○自律神経を分っていない(原因は栄養だけではない)
自律神経を分かっていないのは現代医学を修めた医師の宿命のようです。
栄養療法のクリニックはとにかく低血糖症の検査が大好きで
受けるように勧めてくることが多いです。
低血糖症はその病態が分り易いです。
だから調子が悪いのだと患者に理解させるには
最も説得力があるツールだからだと思います。

普通の精神疾患の人ならば、自律神経が乱れていて当然です。
動かない生活をしていると副交感神経が優位になり
交感神経の働きが弱くなりますから低血糖症になるのはある意味当然なのです。
ぶどう糖だけを飲んで運動もせず安静にしていたら
誰でも低血糖を誘発する可能性があります。
低血糖症の検査が必要なのはごく僅かな人しかいないと思います。
検査では、患者に苦しい思いを強いることになってしまいます。
検査の結果がでても患者は何一つ得することがありません。
ぶどう糖だけを飲んで暮らしている人はいないからです。
実際の食事においてはいろいろな食材と混ざるため、何の参考にもなりません。
アメリカで糖負荷検査をさんざんやってきたマイケルレッサー医師は
もう糖負荷検査をやることを止めたそうです。

血糖値は自律神経によって厳格にコントロールされています。
低血糖症を治すために一番必要なことは生活習慣を見直し
規則正しく生活することで自律神経を正常化させることです。
常識外れなほどの糖質制限ではありません。

○こころが癒されていない
精神疾患になる方は、こころが傷付いていて、非常に生き辛いこころを持っている
ことがあります。生き辛いこころとは、人よりもストレスを溜め易いこころと言うことも
できるでしょう。こころは、無意識に人を操作するので、自分で自分のこころに気付く
ことは難しいと思いますが、自分の無意識がどのようにできあがっていて、なぜ生き辛く
なってしまったのかを認識できれば、そこから自分のこころを見つめ直すことができます。
自分のこころを見つめ直すことで、自分らしく楽に生きる方法が見つかることもあります。
こころが変化して行かないと、また同じ無理をしてストレスを抱えて、精神疾患になる
確率が高くなりますので、自分のこころを見つめ直すことは必要なことだと思います。
残念ながら、栄養だけではこころを癒すことはできません。

健康になるためには栄養療法とか大げさなことではなく
本来はもっと簡単なことが大切なのだと思います。
急激に人を回復させるような療法なるものではないと感じています。
自分でも分からないぐらいゆっくり回復することが本当の回復です。

栄養療法をされている方は食事制限だと思っているようですが
本来あるべき姿の自分にあった食事を見つけることが本当の栄養療法です。
生活習慣を見直し、自律神経を正常化させる。
食事は自分に合った量と質を確保する。
試行錯誤しながら自分のバランスを見つけること。
そしてずっとずっと続けることです。終わりはないのです。

やりすぎだと思えるほどの常識外れの糖質制限をしたり
サプリメントだけを処方して飲めば治るというようなやり方は
本当の栄養療法ではありません。

病気を治す上では、栄養状態を良くすることは絶対必要なことだと思っています。
しかし、薬の代わりにサプリメントを使えば良いと思っているようならば
サプリメントに依存して食生活や生活習慣を見直す機会を奪ってしまいます。
再発しないために、食生活、生活習慣を見直すことが必要ではないかと思います。
栄養状態を良くすることは、治療の最初の一歩としては一番良いと思います。
現在栄養療法をされている方は、栄養状態がある程度良くなった後には
自分でやらなければならないこと(自律神経を整えるための食生活、生活習慣の改善)
が残っていることを知っておいたほうが良いと思います。
栄養だけですべてが解決するほど精神疾患は簡単ではありません。さまざまな要因が重なって起きるものなのです。